<線をテーマとした素描>
デッサンをされる方に、これから3課題ほどに渡って、
線をテーマとした素描の、さわりの部分を、
試みてみたいと思います。
線は、概ね省略された調子、と捉えてよいです。
稜線や、内と外との際の関係を、省略的に現したものが、
網膜光学的な意味合いでも、オーソドックスであります。
フットワークが軽くなった事で、対象の(きわの)スピード感を、
じかに追従することも、容易になってきます。
つまり、質感の一瞬の描き分けや、動いているもの?!の素描表現、
短時間での制作、画面の流れをつかむ、などに効力を発揮してくるのです。
絵画は、線に始まり、線に極まる。
ということばがあります。
解釈は多義的ですが、こどもが最初に描く、ぐるぐるから始まり、
究極的には、自分の線の質をもって、極めていくという、
熟成の過程を表わしたことば、といえます。
モチーフは、いつもより、さらに複雑なのですが、
ここでは線を多く、用いることにより、
調子のムダを省き、いきなりの核心をもって、捉えていきます。
絵にする為にあえて、線を選んでみてください。
描かない意志力も逆説的には必要な時があります。
前述した、オーソドックスで機能的な、
線の用法から始めてみるとよいでしょう。
みなさんの場合は、すでに調子を主体とした、
リアルな素描法から入っていますので、
その延長線上で、線のことが、理解しやすい流れになっています。
つまり線と調子は、同じモノの対極の呼び名のことです。
一般的には、線といえば、りんかく線のことを想起すると思われます。
しかしりんかく線は、数多ある線の、ごく一部の要素に過ぎません。
基本的には、くくらない様に注意して、描いてみてください。
さらには、表現的で自律した、絵画的な線というものもあります。
この場合は、再現化された線というよりは、目的化した線と呼べるでしょう。
一言では語り尽くせぬ線です。
その様な線で、対象を描くこと自体が、
絵にすること、にもなっていきます。
参考図版として、線をテーマとした、巨匠たちの素描ファイルを、
傍らに置いておきますので、自由に閲覧してみて下さい。
そこから、各自で線を読み取りながら、実践研究を、進めて行って下さい。